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2010年6月 4日 (金)

2010年の医療情勢

例年、この季節になると、医療従事者以外の人を対象にした医療情勢の解説を書く仕事が回ってくる。昨夜は突然に当直の代行を頼まれたので、患者さんを診ない時間にその仕事をした。今週2度目の当直で疲労困憊となったが宿題が早く終わったので気が楽になった面もある。記憶のため、ここにもその概略を載せておくことにした。数字は正確なものなので、何かの時に役に立つと思える。

:2009830日の総選挙で民主党政権が誕生して、9カ月以上が経過しました。この政権交代は、格差と貧困を激化させた小泉構造改革路線からの大転換を国民が真剣に求めたことの表れでした。

当初は、自公旧政権に対抗して「生活第一」「コンクリートから人へ」「普天間基地の国外・県外移転」を唱える鳩山内閣への支持率は極めて高いものがありました。

しかし、その後は内閣支持率が低下し続けて5月末には20%以下になり、63日ついに鳩山首相は退陣を表明しました。

この急激な変化の背景は、鳩山首相や小沢幹事長の政治資金疑惑も大きな要素ですが、新政権の実際の政策が、アメリカの強圧に屈してふたたび辺野古へという日米合意を結ぶ、後期高齢者医療制度廃止を先送りし一層の改悪を構想する、障害者自立支援法を廃止するといいながら応益負担を温存する、雇用の改善がない中で労働者派遣法改正を骨抜きにする、消費税率アップへの世論誘導に乗りだすなど、相次いで公約破りを続けているところにあります。

国民は民主党政権がアメリカと大企業の利益を最優先していること、海兵隊の侵略力を強化する米軍再編に抵抗できないこと、経済政策も新自由主義に再び帰ろうとしていることを見抜きつつあります。特に普天間基地返還問題をめぐる沖縄・全国の世論は、もはやどんな後退も許さない地点に達しています。

憲法9条、25条が輝き、誰もが安心して暮らすことができる新しい社会、医療・社会保障への転換に向けて、大きな展望が開く中で私たちは今年の総会を迎えています。

その視点から、以下に現在の情勢の若干の特徴をまとめました。

1 暮らしと雇用

○一世帯当たりの平均所得は、1996661万円から2008547万円へと連続して下がり続けています。2007年国民生活基礎調査からの推計では、生活保護基準以下の所得で暮らす世帯が705万世帯(全世帯の14.7%)にのぼり、そのうち生活保護受給要件を満たす世帯が337万世帯(同7%)ありながら、実際に生活保護を受給しているのはわずか108万世帯(同2%)にとどまります。また、一人親世帯に限ると生活保護基準以下の所得の世帯(保護受給世帯を含む)は743%という高さです。

○失業率は前年同月比で見て18カ月連続して増加し、20103月時点で完全失業者は332万人となりました。求職活動をあきらめて統計上は完全失業者に含まれないが実質的には完全失業という人も73万人います。また非正規雇用労働者数は「派遣切り」で一時減少していましたが、派遣労働者が減少する以上に契約社員などが増えて2010年1月には1708万人と昨年同期を10万人超えました。正規の労働者数は減少が続き3363万人となりました。このような状況を反映して20092010年末年始は、公設派遣村ができました。一歩前進といえますが、求められたワンストップ支援は進まず、行政の対応は極めて不十分に終わりました。山口県では、私たちも参加して防府市で年越しテント村を開き、即日の入院が必要なホームレス状態の人などが多数訪れました。県労連による労働相談は県内5ヵ所で定期的に開かれ、最近は30歳代以上の解雇に関わる相談が急激に増えるという特徴を見せています。

○超高齢社会化が進行し、高齢者がいる世帯が全世帯の4割、高齢者だけの世帯が全世帯の2割、独居高齢者の世帯が全世帯の約1割に達しています。内閣府の「高齢社会白書」では、男性単身者の2割以上が「困った時に頼れる人がいない」と答え、単身世帯の65%の人が孤独死を身近に感じています。

○以上の状況を反映して、自殺者数は12年連続で3万人を超えています。その動機は健康問題が47%、経済問題が25%です。なかでも介護疲れによる自殺が過去最多となっています。

2 社会保障・医療制度

○国保も悪化が進んでいます。全日本民医連調査による2009年の国保「手遅れ死亡」は判明しただけで49人にのぼります。宇部市の最新の資料では、2008年度短期保険証発行2,254世帯、資格証明書発行820世帯となり、それぞれ982世帯、546世帯だった2002年と比べて大きく増え、医療を受けられない市民が多数いることが分かります。さらに短期保険証の期限についても2カ月という極端に短期のものが新たに発行されています。

一方、子どもの無保険状態が問題になるなか、200年通常国会で18歳以下の子どもに一律に6カ月の短期保険証を交付する国民健康保険法の改正がなされ(2010.5.12)、この問題は一応の解決を見ました。

20104月の診療報酬改定は社会保障費2200億円の削減を撤廃し、5回連続マイナス改定を中止させました。しかし、引き上げは大病院に偏って、地域医療の主役である中小病院はわずかに1%程度アップにとどまり、地域医療の崩壊を食い止めるには程遠いものでした。また、一般病棟に入院している患者が、他の医療機関の外来を受診する際には入院基本料が減額になるという地域連携を妨げる内容が含まれ、大きな問題となりました。民主党政権の公約である「OECD加盟国平均の医療費水準への引き上げ」の実現を引き続き強く求めていく必要があります。

○低所得者の受診抑制を改善するために、病院・診療所のなかに無料低額診療事業が広がりました。また広島市などの自治体では生活困窮者の自己負担を免除する国保法44条の活用が進んでいます。山口県でもこれらを車の両輪にして、患者自己負担軽減の運動を大きく広げる必要があります。

3 地域医療

○救急医療の危機的状況が続いているなか、四半世紀ぶりに医師数抑制政策を転換させ、1学年1200人の医学部定員増が実現しました。また、地域で救急医療問題が語られることが増え、当面の対応策として開業医の救急医療への参加も全国的に進んでいます。その一方で2010年度より医師臨床研修制度が改悪され、中小病院での研修は閉め出される動きが出ています。これに反対して、地域で医師を育てながら、OECD平均並みの医師数確保を求める運動が引き続き重要になっています。

○民主党政権が医療療養病棟の今後の拡大を言明する中で、山口県は医療費適正化計画における療養病棟4割化計画を変えていません。これにより必要な医療や介護を受けられない長期療養患者を多数発生させないため、また急性期医療を支えるためにも、計画の変更が切実に求められています。

○歯科医療の危機が深く進行しています。収入階層による歯科受診率の格差が極端で、貧困層は歯を失って噛めなくなっても受診できず我慢しています。その劣悪な口腔状態が健康悪化や社会参加の障害となり、貧困の連鎖を生んでいます。全日本民医連は「歯科酷書」を発行してこれを告発し、「保険でよい歯科医療を」の運動を広げています。歯科経営は厳しく、歯科医師の「5人に一人がワーキングプア(年収300万円以下)」と報道される状況です。

○医療費抑制を目的とした「特定健診・保健指導」制度のもとで2008年度の健診実施率が大きく低下しました。特に、国保受診者は3割弱、協会けんぽ被扶養者家族受診者が1割強11.2%と著しく低率となっています。制度の制約を打ち破って健診内容を改善するとともに、自治体が行なうがん検診を拡充することが急務です。

○水俣病、アスベスト被害、薬剤肝炎患者救済の運動が全国的に広がっています。山口県を例外とすることなく患者掘り起こし、支援の運動を大きくすることが求められています。

4 平和

○米軍再編のため、普天間基地の空中給油機(12機)、神奈川県厚木基地の空母艦載機(59機)が岩国基地へ移転される計画は進み、岩国基地の沖合拡張工事も終了しました。しかし、これに反対する運動は普天間基地無条件返還運動と連帯してかってなく広がっています。基地周辺住民の爆音被害賠償訴訟も審理が進んでいます。岩国の騒音被害訴訟原告団と協力して騒音被害健康調査を行う計画も進んでいます。これは日本本土では初めて行われる米軍基地被害健康調査ですから、内外の協力を得てかならず成功させなければなりません。

2010年NPT再検討会議は核保有国の核兵器廃絶への努力を明文化した最終文書を採択して成功裏に終わりました。多くの方々からのカンパによって山口県から10人以上もの人がニューヨークでの宣伝行動に参加できたことは今後の山口県の反核運動のうえで画期的なことでした。原爆症訴訟のあい次ぐ勝訴を反映して、被爆者の動きも大きくなりつつあります。

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