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2010年3月 5日 (金)

WHO 健康の社会的決定要因委員会最終報告 エグゼクティブ・サマリー 仮訳#4 第3章

第3章 問題を測定して理解し、行動の影響を評価しよう

世界は速いスピードで変わっているし、社会的・経済的・政治的変化が一般的な意味で健康に対して持つ影響、そして特別の意味で国内的・全世界的に健康の公平に対して持つ影響は明確ではない。

健康の社会的決定要因に基づく行動は次のような時により効果的になるだろう。すなわち人口登録(国勢調査)や健康の不公平や健康の社会的決定要因の日常的モニタリングなどを含む基礎的データシステムが設定され、そのデータが解釈されて、もっと効果的な政策、システム、施策に適用されることを確実にする仕組みがある場合である。

健康の社会的決定要因に基づく教育と訓練が必須である。

「健康の社会的決定要因:モニタリング、研究、そして訓練」

≪何をなすべきか≫

いまや、行動のための健康の社会的決定要因によるエビデンスは十分すぎるほどである。政府は、国際組織に支援されて、地方的な・国家的な・国際的なモニタリング、研究、そしてインフラストラクチャ―の訓練を改善することによって、健康の社会的決定要因に対する行動をもっと十分に効果的できるはずである。 健康の公平と健康の社会的決定要因のルーチーンのモニタリングシステムが地方的にでも国家的にでも、国際的にでも設置されることを確実にしよう。・家庭の経済的な負担なしにすべての子どもが誕生時に登録されることを確実にしよう。

・健康の社会的決定要因のルーチーンなデータ収集によって国家的な・全世界的な健康の公平サーベイランスシステムを確立しよう。 社会的決定要因が公衆衛生に影響を及ぼす経路についてと、社会的決定要因に基づく行動を通じて健康の不公平を減少させる方法の効率性についての新しいエビデンスを見つけ共有することに投資しよう。

・健康の社会的決定要因と健康の公平についてのエビデンスの発見と世界的な共有のために提供される予算を創造しよう。

政策関係者、利害関係者、現場の実践者に健康の社会的決定要因についての訓練を施し、社会の認識を引き上げるために投資しよう。

・健康の社会的決定要因を医療・保健教育に組み入れ、健康の社会的決定要因に関する教養をもっと広く改善しよう。政策作成者や計画者に健康の公平の影響評価について訓練を施そう。・健康の社会的決定要因に基づく行動についてのWHOの支援力を強化しよう。

(解説)

データがなければ問題の認識もしばしばありえない。健康とその分配についての、また健康の社会的決定要因のための良いエビデンスは、問題のスケールの理解のため、行動の効果の評価のため、そして全身のモニタリングのために必須のものである。

≪行動のためのエビデンス≫

経験の示すころによれば、社会経済的指標による死亡率、罹患率の基礎的データをもたない国々では健康の公平の課題の前進に困難を生じる。健康問題が最悪の国々、紛争中の国々がそれに含まれるがよいデータがほとんどない。多くの国々がいまだ誕生と死亡の基礎的登録システムをもたない。誕生の登録システムがないことは子どもの健康や発達のアウトカムに大きな影響を及ぼす。

健康の公平、健康の社会的決定因子、そして何がそれらを改善させるように作用するかということについてのエビデンスは一層強化されなければならない。残念なことに、たいていの健康研究は圧倒的に生物医学的なところに焦点を置いたままだ。かつ、多くの研究は性別の問題で偏りを残している。エビデンスの伝統的な階層づけ(ヒエラルヒー)(それによると無差別コントロール試験RCTと研究室での実験が頂上に位している)は一般に健康の社会的決定要因の研究に役立たない。むしろ、エビデンスは目的に適合しているかどうかで評価されることが求められる ―すなわち、まず質問があって、それに説得力を持って答えるものなのである。 エビデンスは政策決定を振り回すものの一部分にすぎない―政治的意思や組織の能力もまた重要である。

政策関係者は公衆の健康に影響を及ぼすものについてや、地位の上下勾配がどのように作用するかを理解する必要がある。健康の社会的決定要因にもとづく行動もまた、現場の実践家のなかでの能力づくりを要求する。それには保健・医学人養成のカリキュラムに健康の社会的決定要因の教育を組み込むことが含まれる。

図 地域と発展度別にみた未登録の出生児数(1000人あたり)2003年 世界中で見れば36%、 サハラ以南55%、中東と北アフリカ16%、南アジア63%、東アジアと太平洋 19%、ラテンアメリカとカリブ海諸国 15% バルチック海の旧ソ連 23%、工業国 2% 発展途上国40%、未開発国71%

「実践者」

以上、私たちは勧告項目の中で求められる鍵となるべき行動を詳しく述べた。ここで、私たちは行動の効果がその手に握られている人々について述べる。公的セクターの行動を通じての政府の役割は健康の公平にとって基礎的なものである。しかし、その役割は一人政府だけのものではない。健康の公平のための本当の行動が可能になるということは、むしろ、市民社会の参加と公的な政策作成という民主的なプロセスとを通じてのことであり、地域的なあるいは全地球的なレベルで支えられてのことであり。健康の公平に作用するものについての探求に裏付けられてのことであり、民間の関係者とのコラボレーション(協働)を伴ってのことなのである。

(解説)

多方面の組織

委員会の勧告事項の中で全体に関わるものの一つに、健康の社会的決定要因に基づく効果的な行動を強めるためと健康の公平を達成するために―政策作成と行動において―セクター間の首尾一貫性の必要性ということがある。多方面の専門家と融資機関が一緒になって、健康の社会的決定要因と健康の公平への彼らの集合的な影響を強めるためにできることは、以下のようにたくさんある: ・全世界的なモニタリングと行動の首尾一貫性:健康の公平を共有のゴールとして採用し、開発の前進をモニターするための指標として共通の全世界的枠組みを使おう。 ・首尾一貫した透明性の高い融資:援助の増加と負債の免除が、首尾一貫した健康の社会的決定要因政策作成と受け入れ側政府間での行動を支援することを確実にしよう。それは受け入れ国の透明性(説明責任)の中核条件として、健康の公平と健康の社会的決定要因の実行指標を用いながら行われるのである。 ・世界政治のなかでの国連メンバー諸国の参加の改善:全世界的な政策作成フォーラムへのメンバー諸国と利害関係諸国の公平な参加を支援しよう。

WHO

WHOは世界の健康において権限を付託されたリーダーである。いまこそWHOのリーダーシップ役割を健康の社会的決定要因と世界の健康公平に基づく行動の課題を通じて強化する時である。これは以下のような行動の幅を持っている:

・全世界と一国内での政策の首尾一貫性: 健康の社会的決定要因の能力向上を支援する幹事機能と、多面的なシステムでの協力機関同士を横断する政策上のの首尾一貫性を身につけよう。全てのメジャーな多面的フォーラムにおいて公衆の健康について意見を表明できるよう、全世界的にもメンバー諸国の間でも、技術的能力を強化しよう;首尾一貫した政策のための開発機構と、健康の社会的決定要因のためのISAにおいてメンバー諸国を支援しよう。

・測定と評価: 開発の中心的目標として、健康の公平にゴールとして設定することと、国々の間で・国々の内部で健康の公平の前進をモニタリングすることを支援しよう;加盟国の間で健康の公平のサーベイランスシステム確立することを支援し、国々の必要な技術力を作り上げよう;発達途上の加盟国を支援し、健康影響指標のツールやそのほかの健康の公平関連のツールを国民の公平の指標として用いよう;周期的に全世界の状態を点検するために世界的会議を定期的に招集しよう。

・WHOの能力を強化しよう:最高指導部から地域責任者、各国の企画担当者者までWHO組織を横断的に、内部の健康の社会的要因に関する能力を築こう。

国家と地方政府

健康の社会的決定要因と健康の公平に基づく行動を下支えするのは権限を与えられた公的セクターである。それは正義、参加、セクター間のコラボレーション(協働)の原則のもとに ある。このことは政府と公的組織のコアになる機能の強化を必要とする。それは国家的、準国家的にであり、とくに政策的一貫性、参加を尊ぶ統治、計画、開発規制、執行、基準設定と関連している。それはまたWHOに支援された保健省のリーダーシップと幹事・世話役的役割の強化にかかっている。

政府の行動は以下のようなものである。

・政府を横断しての政策の一貫性:政府の最も高いレベルにおいて健康と健康の公平に責任を持とう、そしてすべての省庁と部局の政策策定を横断して一貫した考慮を確かなものにしよう。健康大臣たちは世界的な変化をもたらすのを援助できる―彼らは国のトップと他の大臣たちによる採用を作り出すのを援助する上での中枢になるだろう。

・公平のための行動強化:全世界的なヘルスケアサービスの前向きな建設を約束しよう;政府の政策策定を横断して男女の公平を促進するための中央の中心的な性差問題ユニットを確立しよう;農村の暮らし、インフラストラクチャー投資、とサービスを改善しよう;スラムを底上げし、地域ごとの参加を尊ぶ健康都市計画を強化しよう;完全雇用と人間らしい労働政策・施策に投資しよう。;ECD(子ども時代早期の発達計画)に投資しよう;支払い能力によらない中心的健康の決定要因サービス・施策の全世界での供給の方向を築こう、それは社会防衛の全世界的な施策により支援される;健康を損なう商品の規制のための枠組みを確立しよう。

・融資:新しい国際的な融資(援助、負債免除)を健康の社会的決定要因を通じて透明性を伴いながら合理化しよう;累進的な国内税制の改善によって歳入を強化しよう;そして他の加盟国と協働して地域的かつまたはあるいは全世界的な国際的公的融資の提案の発展を図ろう。

・測定、評価、そして訓練:全世界的な誕生登録の方向を築こう;国家的な健康の公平サーベイランスシステムを確立することを通じて健康の公平のための実行指標を政府横断的に設定しよう;健康の公平の影響アセスメントを、きな政策決定の標準的実施要綱として用いる溜めの能力向上を図ろう;そして健康の社会的要因への公的な気づきを引き起こそう。

市民社会

自分が生活している社会に受け入れられることは物質的・心理社会的・政治的権利獲得の視点からみて肝心なことである。その権利獲得が社会的な幸福と公平な健康を下支えするのである。コミュニティの一員・草の根(隣人としての)援助者・サービスと施策の提供者・そして行動結果のモニターとして、全世界から地域レベルに至るまでの市民社会の行為者は、政策と計画と、すべての人の生活における現実の変化と改善への生きた橋を建設する。あい異なるコミュニティを横断して多様な声を組織し促進することを援助しながら市民社会は健康の公平のパワフルなチャンピオンになりうる。

上に列記された多くの行動は、少なくとも一部分では、市民社会からの圧力と鼓舞の結果である;一世代のうちに築く健康の公平に向かってのたくさんの一里塚はー達成されたか失敗したかー注意深い市民社会の行為者の観察によって記録されるべきである。市民社会は健康の社会的決定要因に対する行動において以下のような経路で重要な役割を果たすことができる:

・政策・計画・施策・そして評価への参加:全世界レベルにはじまって、国内のセクター間フォーラムから、さらに地域レベルでのニーズの評価・サービスの分配・援助にいたるまでの、健康の社会的決定要因の政策策定・計画・施策実行・評価に参加しよう;そしてサービスの質、公平・影響ををモニターしよう。

・成果の評価:特殊な健康の社会的決定要因をモニターし報告し宣伝しよう。たとえば、スラム、正規・非正規の雇用状態、子どもの労働、先住民の権利、男女の公平、健康と教育のサービス、諸活動間の協力、貿易協定、環境保護などの改善とサービスのことである。

民間セクター

民間セクターは健康と幸福に深い影響力を持っている。委員会が健康の公平に対する公的セクターのリーダーシップの中的な役割を繰り返し断言している部分でも、民間セクターの活動の重要性を否定することを意味するものではない。しかし、生じうる逆影響への認識は必要だし、民間セクターに注意を払って規制を行う責任はある。健康と健康の公平に対しての望ましくない影響をコントロールすることの傍ら、民間セクターのヴァイタリティは健康と幸福を強化することを多く提供する。その行動は下のようである:

・説明責任を強化する:国際的合意、基準、雇用行為の慣例について認識し説明の責任を果たそう;雇用と労働の条件が男性にとっても女性にとっても公正であることを確実なものにしよう;児童労働を減らすか無くそう、そして産業衛生と安全の基準に関する法令順守を確実なものにしよう;教育と職業訓練を雇用徐研の一部として援助しよう、とくに女性の機会については特別の強調をもって行うべきである;民間セクターの活動とサービス(たとえば救命的な薬品の生産や特許取得や健康保険企画の提供)が健康の公平に貢献し、それを掘り崩してシムことのないことを確実にしよう。

・研究への投資:無視されている疾患と貧困地域の疾患の研究と治療の開発に関与し、救命的な可能性のある領域での知識(たとえば制約上の特許)を共有しよう。

研究機関

知識―全世界的に、地域的に、国内的に、地方的に健康状態はどうなのかという知識;その状態について何ををなしうるかという知識;そして健康の社会的決定要因を通じて健康の不公平を変えるためには何が効果的に作用するかという知識―は委員会の心臓部に位置し、その勧告項目のすべてを下支えするものである。研究が必要とされている。しかし、単純にアカデミックな仕事という以上に、研究には上に挙げたすべてのパートーナーが実践的に受け入れられる形で新しい理解を生産しそれを普及する必要がある。健康の社会的決定要因と健康の公平のために行動する方法の研究と知識は持続的なアカデミックな研究者と現場の実践者の係わり合いに依拠するだろう、しかしそれは新しい方法論にもまた依拠するだろう ―すなわちエビデンスの或る範囲のものを認識し利用すること、研究過程に入り込む男女平等問題の偏見を認識すること、全地球に広がる知識のネットワークと共同体の付加価値を認識することである。この領域の実践者の行動は以下のようなものである。

・健康の社会的決定要因の知識を生産し普及する:研究資金を健康の社会的決定要因の仕事に割り当てることを確実にしよう;世界の健康の観測所や多方面・国家的・地方的なセクター横断的な作業を支援しよう。それは健康の社会的決定要因の指標や介入影響の評価の開発とテストを通じてなされる;オープンアクセスの原則の上に組織されたヴァーチャルなネットワークと広報機関を確立し拡大しよう。それは高所得状況のサイトからでも、中所得状況のサイトからでも、低所得状況のサイトからでもアクセスしやすさを強化するよう管理されなければならない;低所得国、中所得国からの頭脳流出が逆転するように貢献しよう;研究チームや提案や企画、実践、そして報告における男女差別の偏見に取り組み解消していこう。

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