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2010年3月30日 (火)

当直の夜に:伊藤千尋「一人の声が世界を変えた」新日本出版社、2010

診療の手の空いた時間の大半を社会疫学文献の和訳に費やしている毎日が続いているのだが、久しぶりに友人から借りた気軽な本をめくってみることにした。

裏表紙の裏側にキューバの漁村コヒマルにあるヘミングウエイの銅像の写真がある。僕も昨年はここに行ったのだ。ヘミングウエイがよく立ち寄った粗末なレストランの横の階段を降りて濁った海のそばに行き、日本と同じ磯のにおいをかいだ。次男がそこで写真を撮ってくれたのだが、そういえばまだ貰っていないのに気付いた。

それで思い出したのだが、僕たちの視察団がたくさん撮っていった写真を一枚も送ってこないと、案内役を務めてくれたキューバ保健省の高官が今年の視察団にこぼしていたとか。

気軽な本だと言ったことを後悔した。9・11のあとアメリカに吹き荒れた「反テロ戦争」の嵐にたった一人で反対した黒人女性議員バーバラ・リーの紹介から始まるこの本は、世界中で闘い続ける人たちの貴重な目録だ。

ピノチェト独裁軍政下のチリを法王ヨハネ・パウロ2世が訪問したとき、かってビクトル・ハラたち何千か何万人かを虐殺した国立競技場が青年による歓迎集会の舞台になった。そこで代表として壇上に立った青年は、しばらくの沈黙の後、政府に検閲された歓迎の辞を述べることは止めて、本当のことを話したいと言って、軍による国民の虐待について語った。首都郊外のスラムの集会では貧困に苦しむ人々が、椅子に座った法王に次々と窮状を訴えた。法王はその人たちを招き寄せて抱きしめた。このあたりまで読むと不覚にも涙で先が読めなくなった。それは聞いていたギリシャの抵抗音楽http://www.youtube.com/watch?v=UOiMmJ8ErOM とイディッシュの歌http://www.youtube.com/watch?v=GLnxE9JVaJU&feature=relatedのせいでもあったかもしれないのだが。

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