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2010年2月22日 (月)

WHO 健康の社会的決定要因委員会最終報告 エグゼクティブ・サマリー 仮訳#2 第1章

第1章
日常生活の条件を改善しよう

社会組織のありかたにおける不公平は、活力に満ちた生活をめざし健康を楽しむ自由が、社会間比較でも社会内比較でも、不公平に分配されていることを意味する。この不公平は、子どもの時代早期と就学時期、雇用の性質と労働状態、住宅環境の物理条件、居住する自然環境の質において認められる。これらの環境の性質の違いによって、異なるグループは物質的条件、心理社会的サポート、行動の選択において異なる経験をし、それによって人々は健康悪化に対し脆弱であったり、なかったりする。社会階層も同様に医療保健(ヘルスケア)のアクセスや利用の違いを決定し、健康増進や良好な生活、病気の予防、病気の回復、生存における不公平をもたらす。

「出発地点での公平」

≪何をなすべきか≫

人生の早期の数年に対する包括的アプローチは、国際的レベルでも国内レベルでも政策的な首尾一貫した関与、リーダーシップを必要とする。それはまた世界的なECD(子ども時代早期の発達)の包括的パッケージと教育プログラム、すべての子どもへのサービスも必要とする。

人生の早期への包括的アプローチに関与し、手段を提供しよう。現存の子ども救済施策に立脚しながら、社会/感情的、言語/認知的発達を包含するよう人生早期への介入を拡大しよう。

・政策の首尾一貫性を確実にするために、機関間の相互連携を立ち上げよう。そして、機関を横断して子ども時代早期の発達への包括的アプローチが実行されるようにしよう。

・すべての子供、母親、その他の子どもの世話をする人が子ども時代早期の発達プログラムとサービスの包括的パッケージの恩恵を被ることを確実にしよう。それは支払い能力に関係がないようにしなくてはならない。

教育の対策と視野を子ども時代早期の発達の原則を包含するまでに拡大しよう。(原則というのは肉体的、社会的/感情的、言語的/認知的発達である)

・すべての少女少年のため義務的初期・中等期教育の質を保障しよう。支払い能力に関わりなくそうすべきである。少女少年が教育対象者として学校に登録されたり、在学していく上での障害を突き止めて公表し、初等学校の利用者負担をなくそう。

(解説)ECD(子ども時代早期の発達) ―身体的、社会的/感情的、言語的/認知的領域を包含する― は子どもがその後の人生でつかむ幸運と健康に決定的な影響を及ぼす。生き方の巧拙、教育、職業上の幸運が全く違ってくるからである。いくつかのメカニズムを通じてか、または直接的にか、の違いはあるが、子ども時代の早期の状況は肥満、栄養障害、メンタルヘルス問題、心臓疾患、犯罪性に影響していく。少なくとも20億人の子供たちが全世界で彼らが持つ最大限のの発達可能性を満たされていない。このことは彼らの健康と社会全体に対して巨大な意味をもっている。

≪行動のためのエビデンス≫
人生の早期への投資は一世代の中で健康の不公平を減じるのに最も効果があるものの一つである。
子ども時代の早期(胎児期から8歳までと定義される)の経験や、早期のあるいは後期の教育は全人生がたどるコースにとって決定的な基礎的部分である。ECDについての科学的研究は、脳が子ども時代の早期の外部からの影響にきわめて感受性が高く、それが一生続く効果を持つことを示している。栄養が良いことも決定的で、それは栄養の良い母体の子宮の中から話は始まる。母と子は妊娠前、妊娠中、出産、人生早期、人生の長い期間にわたってケアの連続性を必要とする。子どもは安全、健康性、支持、養育、世話、自分に反応してくれる生活環境を必要とする。就学前の教育プログラムと学校は、子供の発達に貢献するより広範な環境の一部として、子どもの潜在能力を築く上で極めて重要で決定的なな役割を担っている。人生早期へのより包括的なアプローチも必要である。いまある子ども救済プログラムに立脚しながら、人生早期への介入を拡大すること。それは社会的/感情的、言語的/認知的発達をふくまなければならない。

図:恵まれない子どもたちへの栄養補給と心理社会的刺激の効果(ジャマイカにおける2年間の介入研究 )発達スコア(DQ)でみて、恵まれた子ども107 対 恵まれない子ども98 だったのが、2年後には、108対107 になった。

 
「健康な場所 健康な人々」

≪何をなすべきか≫
地域社会と近隣同士というものは、基礎的な物資の入手を保障し、社会的に密着し、身体的・心理社会的な良好な状態を促進するようになっており、自然環境の脅威に対しても守ってくれるので、健康の公平にとって必須のものである。

健康と健康の公平を都市政治と都市計画の心臓部におこう。
・みんなに購入可能な住宅が大幅に利用可能になるように都市の開発を管理しよう。都市のスラム改善に投資しよう ―それは優先的に、水と衛生施設、電気、舗装道路をすべての家庭に支払能力を考慮することなく供給することを意味する。
・都市計画が、人々の健康で安全な行動様式を公平に促進するようにしよう。それは、活発な移動への投資、不健康な食品購入を制限する小売計画、さらに良好な環境デザインや、アルコール安売り店の数を制限するなどの規制強化などを通じて行われる。

都市と農村間の健康の公平を促進しよう。それは農村開発への継続的な投資と、農村の貧困や、土地を持てないことや、故郷からの人々の強制排除につながる排他的な政策や方法に対決することによってなされる。
・都市の拡大による不公平に反対しよう。それは農村での土地所有に向かい合う行動を通じて、また健康にいきていくことを支える農村の暮らしぶりをを確保すること、農村のインフラストラクチャーへの適正な投資、農村から都市に流入した人々を支える政策を通じてなされる。

気候変動そのほかの環境荒廃に責任を持つ経済社会政策が健康の公平をも考慮することを、確実にしよう。

(解説)人々がどこに住むかは人々の健康と人生の成功へのチャンスに影響する。2007年という年は都市環境に住む人が初めて多数派になった年である。そのうち約10億人がスラムに住んでいる。

≪行動のためのエビデンス≫
今後とも感染症や栄養不良は世界中の特定の地域やグループで問題となり続けるだろう。しかし、都市化は公衆衛生の課題を一変させる。特に都市貧困層の中での、非伝染性疾患罹患、事故や暴力性の外傷、環境災害による死亡や打撃が問題である。
人々が暮らす日常的条件が健康の公平に強い影響を与える。良質な住居と避難場所と清潔な水と衛生施設を入手できることは人間の権利であり、健康な生活のための基礎的なニーズである。自動車への依存の増大によって、自動車利用本位の土地利用となり、自動車以外での移動の不便さが増して、局所的な空気の質や温室ガスの排出への打撃的効果や運動不足が生じる。都市環境の設計とデザインは、人間の行動と安全性への影響を通じて健康の公平に大きく作用する。

都会と農村の居住のバランスは地域によって極度に異なる。都市人口はブルンジやウガンダでは10%未満だが、ベルギー、香港行政区、クエート、シンガポールでは100%近い。都市型志向の成長パラダイムによる政策や投資パターンは、世界中の農村共同体が、そこにいる先住民とともに、インフラやアメニティへの投資不足の進行に苦しんでいることに直面する。そこには貧困と貧しい生活条件があり、それが住民には、不案内な都市中央部への脱出の理由の一部となっている。

最近の都市化モデルは重要な環境問題に、特に気候変動に挑戦する姿勢をとっている。気候変動は収入の少ない国々や脆弱な人口部分でより作用が大きい。現時点では、温室効果ガス排出は主として先進国の都市部の消費パターンによって決定されている。移動と建設がCO2排出の21%を占め、農業活動は約1/5でしかない。そしていまだ穀物生産は気候条件の如何に大部分依存している。気候秩序の崩壊や消耗と全地球的な健康の不公平を減らすべき課題の大きさは手に手を取って進むものである。

「公正な雇用と人間らしい労働(Decent Work)」

≪何をなすべきか≫
公正な雇用と人間らしい労働条件の保障を通して、政府、雇用主そして労働者は貧困をなくし、社会的な不公平を緩和し、身体的かつ心理社会的な危険を減少させることができ、健康と幸福へのチャンスを強化できる。そして健康な労働力が生産性向上に役立つのは当然である。

完全かつ公正な雇用と人間らしい労働を国内的、国際的な社会経済政策作りの中心的目標としよう。

・完全かつ公正な雇用と人間らしい労働は国際機関の共通目標にされるべきだし、国内政策課題と開発戦略の中心部分であるべきだ。同時に、それは雇用と労働に関わる政策、立法、計画の創造における労働者の代表者の強化を伴うべきである。

健康の公平を達成するためには安全、安心、賃金が公正に支払われる労働、一年を通して労働機会が欠けないこと、そして全員にとっての健康的なワーク-ライフバランスが必要である。

・質の良い労働を男女の隔てなく与えよう。それは現実的で今日的な健康的生活にかかるコストに見合う生活賃金を伴わなければならない。
・すべての労働者を保護しよう。国際機関は、国々が正規・非正規労働者にとってのコアとなる労働基準を備えることができるように支援しなければならない。ワークライフバランスを保障する政策を発展させよう。不安定な労働協定の中で労働者の抱く不安の悪い効果を減らそう。

有害物質、労働起因性のストレス、健康阻害行動への曝露を減らすよう労働条件を改善しよう。

(解説)雇用と労働条件は健康公平に強力な影響を及ぼす。これらが良好な時、それらのことは経済的安定、社会的地位、人格発達、社会関係、自己評価、身体的・精神社会的危険からの保護を提供しているのである。雇用と労働の改善のための行動は全世界的、国内的、地方的でなければならない。

≪行動のためのエビデンス≫
労働は多くの重要な健康への影響が発現する領域である。ここには雇用条件と労働の性質それ自体とがある。柔軟な労働力というものは経済競争においては役に立つものだが、健康への影響をもちこむものでもある。エビデンスは常用労働者に比べ臨時労働者の死亡率が有意に高いことを示している。メンタルヘルスの悲惨な結末が不安定労働(固定した期間のない臨時契約、契約なしの雇用、およびパートタイム労働)と関連している。労働から不安を感じる労働者は有意な身体的精神的悪影響を経験するものである。

労働の条件もまた健康と健康の公平に影響を与える。不利益な労働条件は、身体的健康障害を生じるレベルまで労働者を陥れるし、それはより地位の低い職業に集中する傾向がある。所得の高い国々での労働条件の改善は、何年にもわたる組織的行動と規制によってなんとか勝ち取られたものであるが、多くの中程度または低い所得の国々ではひどく欠けているものである。労働におけるストレスは冠状動脈心臓疾患のリスクを50%増加させるし、高い仕事上の要求を突きつけられること、低い裁量、努力と報酬の不均衡は精神的・身体的健康問題であるという一貫したエビデンスが存在する。

11ページ
図 スペインの筋肉労働者、雇用契約別でみたメンタルヘルスに問題ある者の頻度

永久契約<臨時だが固定的契約<臨時で非固定的契約<契約なし

図 1日2米ドル以下で暮らす労働者のパーセンテージの地域別の違い

1997年、2002年、2007年の経過を追っている。
サハラ以南のアフリカ、南アジアでは90%に達し、10年間全く改善していない。

「どんな人生上の境遇にあっても社会的保護を」

《何をなすべきか》
健康格差を少なくするためには、生活に関して健康的と言える標準を定めるシステムを政府が打ち立てなければならない。その標準とは、そのもとでは誰もその人の責任を超えた状況によって倒れてしまうことが許されないというものである。社会的保護のスキームは発展目標の到達度に依存するというより、発展目標の実現の手段と考えることができる。そのスキームは貧困を減じるために有効な方法であり、地域経済が恩恵を受けるものでもある。

普遍的包括的な社会的保護政策を確立し強化しよう。それはすべての人にとって健康に生きるために十分な所得レベルを支えるものである。
・健康的に生きていくために十分なレベルに向かって社会的保護システムの潤沢さを次第に向上させていこう。
・社会的保護システムが、これまでは締め出していた人々も包含していくことを確実にしよう。不安定な(プレカリアスな)労働に従事している人々のことである。不安定な労働とは非正規労働、家内労働、介護労働などを含む。

(解説)どんな人生上の境遇にあってもすべての人々は社会的保護を必要とする。幼い子どもでも、労働するべき年齢でも、年老いてもそうである。特別な打撃を受けた場合、すなわち病気、障害、仕事や収入を失う場合においても、人々は保護を必要とする。

《行動のためのエビデンス》
社会の低い生活標準は健康の不公平の強力な決定要因である。それは全人生の軌道に影響を与えるが、とりわけECD(こども時代早期の発達)に及ぼす効果を通じて現れる。子どもの貧困と、世代から世代への貧困の連鎖は公衆の健康の改善と健康の不公平の減少に対する主要な障害物である。世界中で5人のうち4人が基礎的な社会保障の援助を欠いている。

福祉制度の再分配は、人々が労働市場で健康的生活を手に入れることができる範囲まで拡大されれば、貧困レベルに影響を与えることができる。潤沢で普遍的な社会的保護は、より良好な公衆の健康と相関し、高齢者の過剰な死亡率を低下させ、社会的に不利な立場の人々の死亡率を低下させる。全般的な保護システムを持つ国々では社会保護向け予算は大きくなる傾向をもつが、保護が成功すればもっと楽に維持できるものとなるだろう。これらの国では貧困と収入の不平等さは、貧困だけにターゲットを向けたシステムしかない国に比べてより小さくなる傾向にある。

社会的保護をすべての人々に拡大することは、国内的にも全地球的にも一世代のうちに健康公平を保障しようとする方向に向けての大きな一歩となるだろう。このことは、不安定な労働(非正規労働、家内労働、介護労働を含む)をしている人たちに向けて社会的保護を拡大することを意味している。
このことは貧しい国にとっては決定的である。そこでは人々の大半が非正規労働をしている。また、女性にとっても決定的である。というのは家族への責任のため彼女たちは有用性の高い社会保護スキームによる適切な便益からしばしば排除されるからである。制度的なインフラストラクチャー整備や財政的な余裕が十分でないことが多くの国では重要な障害物として残っている一方で、世界中の経験からは、所得の低い国々でさえも社会的保護システムの創造をスタートすることは可能だと言える。

図 2000年前後における世界20カ国の総家族政策支出と子どもの貧困

縦軸に子どもの貧困率(平均可処分所得の50%以下を貧困ラインとする)、
横軸に生産労働者の賃金平均に占める社会保障支出給付割合(パーセント)。最も悪いのはアメリカで子どもの貧困率22% 家族政策支出10%、逆にノルウエーやスウェーデンでは子どもの貧困率3%、家族政策支出95%である。

すなわち、後者では、労働者の賃金とほぼ同額の社会保障給付があるということになる。

「全般的ヘルスケア(医療保健)」

≪何をなすべきか≫
公平、疾患予防、健康増進の原則にのっとったヘルスケア(医療保健)システムを打ち建てよう。
・プライマリヘルスケアに焦点を当てた世界の全員に適用される良質のヘルスケア(医療保健)サービスを作り上げよう。
・公的セクターのリーダーシップを強めて公平なヘルスケアシステム財政を強化しよう。それによって誰もが支払い能力に関係なくケアを受けられるようにしよう。

健康専門職を確立し強化しよう、そして健康の社会的決定要因に働きかける能力を拡大しよう。
・国内の健康専門職に投資しよう、そして農村と都会の健康専門職の密度バランスを良くしよう。
・健康専門家の流出を正すよう働きかけよう。そのために健康のための人的資源増やその訓練に投資し、獲得と流出を規制することに双方が賛成することに努めよう。

(解説)
ヘルスケアすなわち医療保健機関の利用が自由に可能なことは、良好で公平な健康の肝心な部分である。医療保健機関のシステムそれ自体が健康の社会的決定要因であり、他の要因から影響を受けるし、それらへ影響を与える。性別、教育、職業、所得、民族性、居住場所はすべて人々の医療保健機関へのアクセス、利用経験、恩恵に緊密に関係している。医療保健機関のリーダーは社会の全関係部署にまたがって重要な奉仕者としての役割を果たしうるし、それが他の機関の政策や行動が健康公平を改善するのを確実にするのである。

≪行動のためのエビデンス≫
ヘルスケア(医療保健)なしにには基礎的な健康の改善の機会は失われてしまう。部分的なヘルスケア(医療保健)システムあるいは不公平な供給しかしないシステムでは、社会正義の課題としての全般的な健康の機会は失われてしまう。これはすべての国の中心的課題である。所得の低い国々ではより差し迫って、アクセスが自由で適切に構想され管理されたヘルスケア(医療保健)システムが「ミレニアム開発目標」(MDGs)の達成の上で効果的である。
それらなしにはMDGsを達成するチャンスはすっかり弱まってしまう。いまだにへルスケア(医療保健)システムは多くの国でぞっとするほど弱体である。それは貧しいものと富むものとのの間で供給、アクセス、利用での大変な不公平を抱えているのだ。

委員会はヘルスケア(医療保健)を共通の財と考え、市場で買うべき商品とは考えない。実際にすべての高所得国家はそのヘルスケアシステムを全般網羅原則で組織している(健康への資金供給と現物提供を組み合わせて)。全般網羅はその国の誰もが(良質の)サービスを必要と選好に従って同じ内容で受けられることを必要とする。それは、所得レベルや社会的地位、居住地域に関係なくあるべきであり、人々がこれらのサービスを使いこなせるよう教育されることも必要である。そして、全人口に向けて同じ給付量があるように拡大していくべきものである。その他の国についても、最も貧しい国々を含めて、長期間適切な援助を受けつつも全般的なヘルスケアの網羅を熱望すべきではないと騒ぎ立てるような議論は存在すべきでない。

委員会はヘルスケアシステムに一般税や(と/または)強制保険を使いながら財政支出することを弁護する。公的なヘルスケアに支出することが再分配に役立つことは、いろんな国から国へと次々に認められていることである。エビデンスは感銘すべきものとして、公的に基礎づけられたヘルスケアシステムを肯定する。特にヘルスケアにおいては窓口負担(out-of-pocket spending)を最小にすることが肝要である。低から中レベルの所得の国におけるヘルスケアのための利用者負担の政策的賦課は利用を全体的に減少させることにつながり、健康のアウトカムを悪化させる。毎年1億人以上の人が家庭での破産的に高額な医療費用のため貧困の中に追いやられている。これは受け入れがたいことである。

ヘルスケアシステムはプライマリヘルスケア(PHC)の上に築かれて初めてより良いアウトカムを得る。このときPHCモデルは二つあるが双方ともに必要である。一つは予防と健康促進が治療とバランスがとりながら、社会的決定要因のそれぞれの範囲を横断して地域的に適切な行動をとることを強調するもの(「プライマリヘルスケア」)、もう一つは高度な治療に適切につないでいくことを条件にして初期レベルの治療を強調するもの(「プライマリケア」)である。

すべての国で、とりわけ最も貧しい国や頭脳流出中の国では緊急に、十分な技術を持った健康領域の技術者が地域レベルで十分な数だけ存在することが、ケアの対象範囲を拡大し、ケアの質を改善するうえでの基礎的条件となる。ヘルスケアで働く技術者の訓練と確保への投資はヘルスケアシステムの必要な成長のため肝要なことである。このことには、健康領域の技術者の流れについて、国内、地方での投資や技術開発同様へ向けるのと同様な注意深い関心を向けることも含まれる。医療と保健の技術者 ―WHOから地方のクリニックまで― は、健康に関する地域社会の理念や意思決定の上で力強い発言力を持っている。彼らは、健康障害の社会的原因にヘルスケアシステムを通じて力を合わせて働きかけることが倫理的に求められていることの証人になることを、(効率価値に対してと同様に)引き受けている。


所得5分位の中で最も低い層と高い層とで基本的な母子ヘルスサービスの利用を比べる

出生前ケア、経口的脱水治療、ワクチンを全部受ける、風邪の治療、出産援助、下痢治療、発熱治療、避妊剤の使用のいずれにおいても2倍以上から1.5倍の格差がある。

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