野中広務・辛 淑玉「差別と日本人」角川oneテーマ21 2009年
2か月前、民医連の理事会で、友人の田村君から「空港で買ったのだけど、とても面白い」と紹介されながら、読まないでいた。昨日の日曜日、書店に平積みされていたのを買って1日で読んだ。読みやすいし、興味深いし、売れているのだろう。
辛さんについては、民医連の元会長の高柳先生から「シン・スゴが岩国に行くといっているからお世話を頼む」という電話を突然もらったことがある。大したことはできなかったが、同僚に依頼して一応のことはしたので、少し親近感がある。
あとがきにも出てくる小森龍邦さんは、ある意味で僕の師である。中学校の教員をしていた父の本棚に並んでいた彼の著書を読むことから僕は初めて「社会主義」を知った。小学校高学年、中学の頃である。彼の著書が父の本棚にあったのは、広島県の同和教育に対する彼の圧倒的な影響による。僕の部落問題への関心を年少者にしては偏っていると見たのか、「藤村の『破戒』を読んでかぶれたのでしょう」とある教師が言ったことがあるが、それは見当外れだった。僕は『破戒』は小学生のころに読んだが、別の本も読んでいたのだ。
もちろん、高校の後半では、糾弾や暴力を肯定する小森氏の本を読むことはもはやなくなった。本書88ページに説明されている八鹿高校事件については、それがほぼリアルタイムで報道される新聞 赤旗を読んでいたから、辛 淑玉さんの見解が間違っているのがよくわかる。裁判は全体として正当な判決を下したのだ。
そういう瑕疵があるとしても、この本全体は興味深い。
特に末尾に詩人丸岡忠雄が引用されているのは有難いと思う。かれは、山口県が誇る詩人・運動家である。
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