« 「エル・システマ」とグスターボ・ドゥダメルの放送番組を見た | トップページ | 京都で医療倫理の交流集会 »

2009年4月 7日 (火)

桜の枝

急性心筋梗塞、急性心不全、脱水、急性腎不全、肺野の腫瘤陰影、高カルシウム血症、譫妄など多彩な症状を呈して救急車で運ばれてきた80歳代男性。最初はさっぱり原因がわからず、目の前の異常一つ一つへの対処に追われた。家族への説明もきわめて深刻なままに二転三転し、不信を買い、微妙な場面も生じた。

胸水細胞診で「肺癌の胸膜浸潤」と結論がようやく着いたのは入院して10日くらい経ってからのことだった。

肺癌に伴う高カルシウム血症が多彩な症状の原因だったので、ビスフォスフォネートの注射で血清カルシウム値を正常化させると、小康状態が訪れた。

その患者さんが桜が見たいとあまりいうので小枝を折ってベッドに持っていくと涙を流して喜んだ、と今日の夕方、看護婦さんから聞いた。

僕のほうは、他の患者さんの用事にかまけて、この患者さんのそんな気持ちには気づかなかった。まして涙を流したなんて。毎日回診はしながら、どういう気持ちで終日ベッドにいる日々を送っているかまで届く想像力がなかったのだ。

何か大事なことが僕を避けて流れているのかもしれない。

「だったら、明日、骨折を起こさないようなるべくそっと車椅子に乗せて、病院の下にある桜の木まで出てみたらいいよ」と言ったら、しばらくして奥のほうで歓声が上がっているのが聞こえた。

|

« 「エル・システマ」とグスターボ・ドゥダメルの放送番組を見た | トップページ | 京都で医療倫理の交流集会 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 桜の枝:

« 「エル・システマ」とグスターボ・ドゥダメルの放送番組を見た | トップページ | 京都で医療倫理の交流集会 »