技術専門職の新しいモデル「反省的実践家」
技術の定義として、「自然科学の産業現場への適用だ」(武谷三男)とする考え方がある。
それをさらに医学・医療に適用したのが「医療は、自然科学としての医学の患者への適用だ」(元日本医師会長武見太郎)とする定義である。
その流れで、専門職としての医師像として、「日々新たになっている医学的知見に熟知して、それを厳密に患者に適用する」というモデルが出来上がる。
私たちが思い描くエライ「専門医」はその典型である。
しかし、実際には患者の持つ問題は広範で、一方、医学的知見は日進月歩とはいっても、実際問題の広範さには到底追いつかない。
「専門医」モデルだけでは医療現場の問題は解決できない。
そこで登場してきた新しい技術専門職像が「反省的実践家」である。
「未知の問題を迷いながら解決しようとする」
→「反省する」
→「新しい〈仮説・理論・解決技法〉を作っていく」
というのが、その姿である。
これは、産業におけるPDCAサイクルそのものでもある。
反省的実践家の典型は私たちが「総合医」と呼ぶものである。
言葉を変えれば、「専門医は演繹的で量的研究指向で活動する」、「総合医は帰納的で質的研究指向で活動する」、といってもいいだろう。
ただし、これはあくまでモデルであって、医師には常に両方の側面があり、場面場面で使い分けているように思われる。
そうはいっても「反省的実践家」モデルは、歴史的に新しいので、意識的に深められているとは言い難い。したがって、特に注目して方法論を検討する必要が出てきているのである。
反省は「振り返り」とも呼ばれる。
「振り返り」を一定のパターンで行う技法が提案されている。
「印象的な事件分析」とでも訳すべき方法である。(Significant Event Analysis=SEA)
これのために藤沼先生が作ったごく簡単な形式でできた振り返り用紙があるので採用してみたらどうだろうか。
①印象的なできごとのあらまし+最初に考えたこと
②うまくいったこと
③うまくいかなかったこと
④今後にどう生かしていくか
たったこれでけでできているシートである。
時間を長めに取った外来カンファレンス、死亡カンファレンスにも向いていると思われる。
その繰り返しの中で、新しい技術専門職モデル「反省的実践家」が育っていくのである。
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