総合医の構造と機能
キューバには、人口当たり日本の3倍の医師がいて、その半分は、ファミリードクターかポリクリニコで働く総合医に成ることが計画され実行されていることを先日来紹介している。
翻って、日本では、総合医はどのくらい必要だと見込むのだろうか。 もちろん、プライマリケアの充実が日本でも必要だという立場からである。
そのような問題に詳しいある医師に質問してみたところ、それについては総合診療に現在従事する医師たちへのアンケートが実施されており、最低4割くらいは、総合医としての研修を積んだ総合医であることが望まれているということである。
面白いことにキューバとほぼ同じであるが、納得できる数字と思う。
さらに、日本では、総合医を①家庭医と②中小病院で働く病院総合医に区別する考え方が主流になってきたというのが、日本総合診療学会雑誌2008年#2の「特集 病院総合医をこうして育てる」に述べられている。
これも、キューバのポリクリニコに相当するのは,日本では中小病院なのであると考えれば 、ファミリードクターとポリクリニコの2層性も共通するのだと解釈できて興味深い。
そこで、もう少し詳しく、総合医の2層構造を考えてみよう。
1 病院総合医
主として中小病院の一般内科を担う
病院専門医が診療所総合医になるときの再教育の一部を担当する。
2 診療所総合医
これは2種に分かれる
ⅰ家庭医としての訓練を受けた人 、病院総合医からの転身もありうる
*この人たちも専門医が診療所総合医になるときの再教育の一部を担当する
ⅱ)病院専門医から訓練を受けて転身した人
現在は、この訓練無しに開業している医師が多く、その専門外の診療はかなり時
代遅れである。ただ、患者さんのほうが選んで受診するので実害は意外に少ない
こうして考えていくと、総合医問題の裏面となっているもう少し難しい問題にも気付く。それは、中小病院や開業専門医の問題である。大病院指向が目に余る現在において、その存在は重要である。住民のすぐ側に専門医がいるという意味は大きい。
キューバでも、専門医を住民の近くに置くという意味で、国立の総合病院から、多くの専門医師がポリクリニコに出向し、特診を開いている。
しかし、難しいのは、開業専門医や中小病院専門医の役割の明確化や技術維持の手段である。これにはいまのところあまりいい考えが思い浮かばない。
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