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2009年3月22日 (日)

buena vista social club を聞きながら

コンパイ・セグンドが亡くなったと聞いたのは去年のことのように思うが、改めて  buena  vista social club をDVD で見た。ヴィム・ヴェンダースのロードムービー社製作で10年前に評判になったものである。CDも友人が持っていたので借りてきた。

10年前のハヴァナは、1月に行ってみて来た時より綺麗に写っていた。というのは、この10年は、古び、災害に痛めつけられるままになっていたということだ。

200万都市がああいう状態であることは、日本の大都市を見慣れた眼には信じられないことである。人口だけを聞くと名古屋や札幌がキューバの小さな島にあるように思えるのだが、それはまったく違う。一緒に行った人はピョンヤンを思い出すといっていた。

その貧しい都市で営まれている、異様に質の高い教育と医療の可能性が、何か変わったものに惹きつけられる習性の私をとらえてしまう。

ところで、正統なもの、正面きってものをいうことを嫌うのは、きっと私が15歳のころ貧しかったせいなのだろう。辺縁にいることを必ず選択してきた。ギリシャ映画「永遠と一日」で繰り返される言葉 「どこに行っても他所者(よそもの)」 ほど自分を言い表した表現に出会ったことはない。

この1年、月に2回くらい東京に出かける生活が続いている。もちろん、東京にいるときは他所者である。それは地理的な意味だけでなく、参加する会議のメンバーとしても、である。

では、宇部に帰れば他所者でないかといえば、そうでもない。東京出張を繰り返すようになって、他所者の程度は、一段と深まった気がする。

あの、地球の反対側にある島の、廃墟のような大都市の中に、私を他所者にしないところがどこかにあるのではないかという幻想が、CDの #7 Veinte anoes を聞いていると、突然沸いてくる。

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