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2008年12月22日 (月)

最近の見聞 ①湯浅誠のほうが神野直彦より確りしている ②愛知県の派遣切りが北海道の病院の待合室にまで影響を及ぼしている

①12月15日月曜、上記の二人が出演するNHK-TVの討論番組を短時間見た。したがって、この感想はそのわずかな見聞による。情報としての信頼性は低いことをあらかじめお断りしておく。(このブログ全体がそうだ、といわれると返す言葉がなくなりますが・・・)

私が感心したのは湯浅誠氏の次の発言である。

「いまVTRで紹介されたケースでは、本人が生活保護を受けていることに注目する必要がある。

というのは、生活保護というしっかりした支援があれば、本人は希望に沿った仕事を丁寧に探せるからだ。このケースでも、本人が常勤雇用で働きたいと明確な希望を述べて、不安定な派遣で働くことを拒否することが可能だった。

このように、失業した人が生活保護で守られれば、日雇い派遣のような劣悪な雇用形態そのものが労働力市場から淘汰されて消える運命になる。」

すなわち、違法な派遣を禁止しようとしても抜け道ができやすい表面的な個別の法的措置だけでなく、一般的なセーフティネットを強固にすることにより普遍的な措置を講じることが雇用状態の改善に欠かせない、ということである。

そのとき、アナウンサーはその論旨の明確さに驚いて、口がぽかんと開いていた。社会政策にも通じている賢そうなアナウンサーでもそうなるほど、指摘は鮮やかに的を得ていた。

これに対し、神野直彦先生の意見は、善意だが意味不明瞭という印象が拭えなかった。日本で最も良心的な制度学派の経済学者で、若いとき1年余りニッサンの工場での労働者経験を持っている人といっても、政府の委員会に入ったり、現場につながりがなかったり、財源は消費税からという考えに固執していれば、こうなるしかないのかと思えた。これが無礼で的を外した感想であればいいのだが。

②出張した会議で聞いた話。

愛知県のトヨタの工場で派遣切りにあった兄弟が、地元の市に生活保護申請をしたところ、親族照会で北海道に姉がいるということを指摘され、姉を頼るように指導された。

北海道までのフェリー代をその市からもらって札幌に行ったが、姉も苦しい生活で二人には何の援助もできなかった。ここで兄弟はホームレス状態になるが、寒い北海道での野宿に耐え切れなくて、病院待合室に寝ようとしたところ、守衛さんに見咎められた。

事情を聞いた守衛さんは兄弟を追い出すことはしないで、数日間何も食べていなかったことを聞いてカップ麺を食べさせた。翌日ホームレス支援のNPOに連絡し、当面の宿泊場所は確保された。

そういう話であるが、この年末年始は派遣切り難民とも呼ぶべき青年が全国にあふれるのではないだろうか。そのとき「そこで寝てもらっては困るんだよ」などと追い出さない不完全義務が市民には最低限求められる。もちろん行政の完全義務はもっと別の形で存在する、と私には思われたことだった。

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