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2008年12月27日 (土)

今年最後の医療生協理事会・・・山口二郎「若者のための政治マニュアル」講談社現代新書、2008.11.20刊を参考に

今日は今年最後の医療生協の理事会だった。毎回、冒頭に理事長挨拶として、私なりの情勢分析をしているのだが、今回は相当に難しい。経済情勢はサブプライムローン問題発覚当時をはるかに超えて、大恐慌の様相となっているし、これから年末9日間を解雇された非正規労働者たちがどうすごすかという切羽詰った問題もある。

記録として、私の発言メモをここに残すことにした。来年、どんな気持ちで読むのだろうか?

・・・・

きわめて重大な事態が世界と日本に進行中です。

誰もが100年に一度の危機だと口々に言っています。

1929年の世界大恐慌以来の資本主義の危機、すなわち、21世紀最初の大恐慌、世界同時不況が来たのだという認識です。

実はこのような認識は、1980年に唱えられたことがあります。1971年のニクソンショック、1973年の石油ショックを経て、第二次大戦後の繁栄は終わりを告げたという話です。日本共産党も第15回の大会で『世界資本主義は第一次世界大戦、第二次世界大戦前後の危機に匹敵するような政治、経済の全般にわたる深刻な歴史的危機に直面している』と書いています。この頃出版されたのが、今年なくなった上田耕一郎さんの「第三の危機」という本でした。しかし、その後、上田さんもこの認識は間違いだったと自己批判されました。第三の危機はすぐには現実化しませんでした。

それは何より、1989年のベルリンの壁の崩壊、1991年ソ連解体、1992年鄧小平による中国の市場経済路線の採用という過程で、ソ連・東欧、中国に巨大な新しい資本主義市場が生まれたことによります。世界中が残すところなく資本主義経済に組み込まれて、「大競争時代」、「グローバリゼーション」の時代が到来して、世界の経済は危機を脱してしまったかに見えました。

しかし、第三の危機は潜伏していただけで、いまようやく本当の姿を現したかに見えます。この間の日本バブル崩壊などの小さな恐慌をはるかに超える、それが阪神大震災程度なら、今度は彗星の衝突だというような大恐慌が来るとみんが感じています。

それが何を意味するかよく考えてみないといけないと思います。20世紀資本主義の最大の危機である1929年の大恐慌は、15年以上かかって1945年の第2次大戦の終了でようやく解決がついたのです。全世界で6000万人、日本周辺のアジアだけで2000万人が犠牲になりました。

もし、現在が1929年に相当する恐慌であるなら、最低限、第2次大戦くらいの消費をやりつくさないと、6000万人くらいの死者を生み出さないと終わらないということなのです。

戦争については庶民感覚のなかですでにきわめて歪曲した待望論が出ています。赤木智弘というひとの「丸山真男をひっぱたきたい」という20071月号論座への投稿は大きな反響を呼びました。戦争でしか、この固定した格差社会が崩れないのであるなら、戦争こそが希望だと彼は論じたのです。現在、反貧困ネットワークで活躍している雨宮処凛(あまみやかりん)も、社会最初の参加は右翼団体の加入でした。そこにしか、自分を認めてくれる場所がなかったと彼女は語っています。これらは国民側から見た話ですが、来るべき戦争の気配は私たちが思うよりはるかに濃くなっているのではないかと思います。最近の田母神事件もその象徴的出来事でしたが、イラクの自衛隊派遣に反対するビラを自衛隊官舎に配る、共産党の地方議会活動報告ビラをマンションに配るということが有罪になる、前者では最高裁で有罪になるというところまで社会統制が進んでいることに私たちは敏感でなければならないと思います。

さて、この世界大不況の特徴は、新自由主義がそれを呼び寄せ、なお、それによって危機を乗り超えようとしていることだと思います。新自由主義が国民に押し付けたイデオロギーは「自己責任」でした。それが頂点に達したのは2004年のイラク人質事件だったかと思います。4月の高遠さんたちの受けたバッシングはすさまじいものでしたし、10月の香田証生さんにいたっては残酷に殺されましたが、国民の間に大きな同情論がおきませんでした。

しかし、その、「自己責任論」イデオロギーも現在の「解雇の津波」(12月27日朝日新聞2面)の中では、急速にその化けの皮がはがれています。

「えり好みをしなければ外国人がしているような低賃金で重労働の仕事はあるのだから、仕事がないというのははたらかないという選択の結果だ。だから仕事のない人間を助ける必要はない。どこに住もうと自由なのだから、好き好んで辺鄙な場所に住んでいる人に、高いコストを支払って医療や、教育、郵便などの公共サービスを提供する必要はない」という規制改革・民間開放推進会議議長の宮内義彦オリックス会長などの主張をとうてい国民は受け入れることができなくなっています。

「予防で医療費を減らす」という一見まともな議論の底にあった健診の破壊行為も見破られています。健診で医療費を減らすというのはありえないのだから、そういうのはただ医療費を減らす口実に過ぎなかったのです。その被害は甚大で、日本の健診制度は半分方崩壊したといって過言ではありません。それに触れた投稿が12月26日の朝日新聞には載っています(台 豊「疾病予防 医療費抑制に結びつけるな」)そういうことを国民が十分に学んだとすれば、自己責任イデオロギーの捕虜ではもうありえないのです。

イデオロギーとしての新自由主義にとどめをさすことができるチャンスが来ている、それを通して、「さまじいリストラや、戦争という形でこの恐慌を資本家側が乗越えることを許さない、人間らしさを再生する」という形で、資本を合理的に規制し、新しい経済、社会の仕組みに到達するチャンスが私たちのもとに訪れているのだと思います。

私たちにとっては、その第一歩が、医療生協300万人対話運動であり、当面の社会保障運動です。あとで詳しい事情はご説明しますが、山口県独自で行なっている単県福祉制度を後退させる計画が進行中ですし、介護保険をめぐる情勢も重大になっています。私たちの世代が介護が必要な年齢に達したときに職業的介護者はどこにもいないという未来がいよいよ切実になって来ました。

また年末年始のホームレス対策も他所の地域のことではないと思えます。27日の「天声人語」も湯浅誠氏の言葉を引用しています。年末年始9日間はある人々にとっては生きるか死ぬかがかかる大きな山です。人事と考えることは絶対にできないはずです。

どうも、ゆっくりお正月を休んでよいという事態ではないようなので、ぜひ、今日のの理事会でも中身の濃い議論を行っていただき、そうして、ほんの少しお正月休みを過ごしたら、年明けには思いきった運動の前進を図っていきましょう。

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