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2008年11月20日 (木)

訳の分からなさには訳がある・・・という「質的研究」の提案(笑)

日常の診療現場での訳の分からない話から、「職場に共有される仮説」を作る試み。

1:陳旧性肺結核(肺葉切除手術後)の70歳代女性
  
呼吸困難が次第に強くなり、体重も減少してきた。
身体障害者手帳3級を取得。在宅酸素を始めて、体重も回復。
ただし、自覚的にはさほど劇的によくなったという印象がないらしい。

診察ごとに「酸素は必要か」と質問される。
「そんなに酸素吸入が苦痛なら止めますか」というと「やめてもいいんですか」と喜ぶようにいわれる。そこで業者に機器の撤去を頼むと、「持っていかないでほしい」と拒否されたとのこと。

その後も毎回「酸素は本当に必要ですか」と質問されて「したほうがよいが、苦痛なら止めても仕方ない。できれば夜間だけでもしてください」の繰り返しで、こちらもだんだん我慢できなくなった。

今日も同じ話だったが、一言だけ、違う発言があった。「酸素、やっぱり必要ですかね?電気代が高くて主人がうるさい。4000円もかかる」

そうだったのか!これが小野田市だったら電気代の給付も私たちの努力の成果として、存在したのに!!

「訳の分からなさの奥には経済的困難が隠れていることが多い」、これが集団で共有する仮説としての、私からの提案である。

2: 80歳代女性 「血便 疑い」

B医師の慢性疾患患者さん。 認知症も高度。
木曜日から息子さんの言う「血便」の訴えで受診。その場にいなかったB先生の電話指示により金曜日にO医師がS状結腸内視鏡したが、異常なし。
しかし、土曜日、なお「出血」が続くという息子さんの強い訴えでパートのK医師が入院指示を出した。
そのことについてK医師から常勤医師の誰にも申し送りなく、週末入院患者の主治医を決める月曜の医局朝礼には入院報告が上がらなかった。

雑談から情報を得ていた私が自主的に主治医となった。
しかし、あくまで、カルテ上の情報は「血便」である。

即日、再度、S状結腸内視鏡。異常なし。退院を決める。
そこで退院時病名は「血便 疑い」となる。

その退院時病名を見た息子さんが「『疑い』は変だ」と猛(?)抗議とのこと。そのときまで息子さんと一度も会えなかった私としては、やはり「訳の分からなさ」を感じざるをえない。

そして、時間をやりくりして息子さんと会う。
「血便じゃないんです。血尿なんです!」
息子さんの手には、こちらが持っていない土曜日の尿検査の伝票がある・・・・。

?? 話を整理してみると「出血性膀胱炎」の可能性が大きくなってきた。
「これまでなんどもそういう診断だったんです」

私としては他の医師が外来管理している患者さんの一時的主治医になるのが本当にいやになった瞬間だったが、「訳の分からなさの奥には、こちらの情報が不足している場合がある」というのが、提案する仮説。

当たり前すぎるかなぁ。


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