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2008年11月24日 (月)

山口県医師会報でみた神野直彦氏の講演記録(神野氏は消費税値上げを主張しているのか?)および長谷川奈津江先生の文章

山口県医師会報2008年11月号には、9月25日に開催された神野(じんの)直彦東大教授の講演記録が掲載されている。

この講演会があったことを私は知らなかったが、聞いてみると参加対象が郡市医師会正副会長のみだったとのこと。せっかくなら、市民も巻き込んだ公開企画にしてほしいと思う内容である。

講演はそう長いものでなく、記録もきちんとまとまっている。本を読むより理解しやすい。医師会員でない方の場合入手が難しいかもしれないが、事務局に頼めば何とかしてくれるかもしれない。

「ドイツ財政学」がアメリカに渡ってヴェブレンやガルブレイスらの「制度学派」になり、新古典派の反対派として、日本の宇沢弘文、神野直彦たち、良心的な経済学者に受け継がれていることも述べられている。

とくに1973年9月11日、チリのアジェンデ大統領が軍部クーデターにより惨殺されたとき、そのニュースを聞いたアメリカ・シカゴの新古典派=シカゴ学派の学者たちが「喜び合う悪魔のような顔」をみて、宇沢弘文氏が決定的にシカゴ学派と訣別を決意したというのは有名な話だが、改めて生々しく語られており、印象的である。

圧巻は、人間は贅沢をするために富を持ちたがるのではなく、富によって他人をひれ伏させ、他人を自由に動かしたいから富を持つのだから、富の「トリクル・ダウン(豊かな人のおこぼれが貧しい人を潤すこと)」は決して起こらないと説明している部分である。

また、医療・教育・介護などの必要不可欠なサービスは個人や個々の家庭の購買力に応じてサービスしてはならないものであり、、「水平的再分配」という方法、すなわち豊かであろうと貧しかろうと無料で提供する方法をとれば、貧富の差を緩和するのにきわめて有効であることが、ヨーロッパ対アングロサクソンおよび日本との比較も挙げて力説されている。
たとえば生活保護費(これは「垂直的再分配」と呼ばれる)の半分は医療費が占めているのだが、そもそもの医療費自己負担が最初から無料であれば、生活保護費用は少なくてすみ、貧困層のなかでの生活保護受給者と非受給者間の摩擦や分断も起こりにくくなることが丁寧に述べられて説得的である。

*ただし、最後に近いあたりで、保険料を上げるより消費税のほうが社会保障拡充の財源としてよいのではないかと言っている点は納得しにくい。編集に当たった県医師会の間違いかもしれない。神野氏の他の著書も見て確認したいところである。

 そのほか、この号では長谷川奈津江先生の「子どもは国の宝ですか」という随筆の善さが目立つ。日本のひとり親家庭の貧困さがOECD諸国のなかでも際立っていることを、診療現場の実感の裏づけをもって発言し、政府のひとり親支援の低さも指摘している。山口県にもこういう若手の開業医がいること自体に励まされる。

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