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2008年11月 6日 (木)

健診が国民から奪われている 金融危機はそれを激甚なものにするだろう

昼からの診療を休み、岡山に会議に出かけた。中国四国ブロックの健診担当者会議に全国担当の理事として参加するためである。おおよそ20人くらいが各県の病院から集まった。

健診収入がおおよそ2割くらいはどの県の病院でも減っている。会議はそれをどう回復するかに終始した。ここでは経営課題としてしか健診が扱われていない。

それでいいのか?奪われているのは医療機関の収入なのか?と考えて私はいらだたしくなった。

奪われているのは、健診を受ける国民の権利ではないのか?奪われているのは医療機関と健康な地域住民とのつながりであり、医療機関に対する住民の信頼なのではないのか?

特定健診・特定保健指導制度の開始により、健診が各保険者に委ねられることにより公衆衛生から社会保険に変質したというだけでなく、その先は公的な健診の消失なのである。

混合診療と軌を一にする変化により、アメリカの生命保険資本に健診が売り渡される日は近づいている。支払った保険料によって受けられる健診が決まるという事態がくるだろう。私的保険に加入していなければ、健診を受ける権利がないという事態でもある。

そのとき、病院の待合室のシートは3段階位のクラス別に分けられ始めるかもしれない。国内便の飛行機にいつの間にかクラス別シートが生まれ、優先搭乗が当然のように案内されるようになったのに似て、「優先診察の案内」が診療でも健診でも待合室に流されるのだろうか。

サブプライムローンによる金融危機は数年前に予測されていた。その破綻を今日まで引き伸ばしたのは小泉による郵便貯金のアメリカ資本への引渡しだった。それにもかかわらず金融危機がこのように明らかになった今、アメリカの日本国民収奪の次のターゲットは医療である。日本の医療保険を民有化してアメリカ生命保険資本の手に渡してしまえば現在の国民医療費に相当する数十兆円の利益がアメリカに移動するだろう。

そのとき主役となるのはアリコだろう。今回の金融危機のなかでアリコが救済されたのは米軍兵士の生命保険を担っているからだと小森陽一氏は言っていた。であれば、本格的にアリコを救済するのは、日本の巨大な医療保険市場の提供だろう。

健診収益の減少として私たちに見えている現象はまさにその過程に他ならない。生存権を保障するものとしての健診という憲法的な視点を根拠にして私たちは反撃するほかはない。

そのようなことを終わりの挨拶に述べて、岡山駅の向かった。

参加者に十分わかってもらえたという気持ちはしなかった。私自身、もう少し整理して考えたかった。

岡山駅の小さな書店で買った「週刊東洋経済」最新号(2008年11月8日号)を開くと次のような文章が目に飛び込んできた。

(1990年代の日本のバブル崩壊が阪神大震災にたとえられるなら、今回の金融危機は彗星の衝突に匹敵する。)

すでに自動車産業では、大量の非正規労働者の整理が始まっている。今回も激しいリストラでスリム化できた大企業だけが生き残っていくのだろう。健診も医療も奪われた人たちが街にあふれ始める。

反撃の準備を始めるのはまさに今なのである。ぬるい議論をしているべき時ではない、と考えながら下りの「のぞみ」に乗った。

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