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2008年10月22日 (水)

地域単位で捉えられる治療能力・・・たとえば重症胆道感染症を引き受ける難しさ

すでに前の日の記事に書いたことだが、視点を変えて再録しておきたい。

民商健診のため出務したこの日曜に、土曜の当直だった医師に相談されたことから94歳の女性の主治医を引き受けた。

通常は土曜・日曜の入院に際しては主治医を決めず、月曜朝の朝礼を待つのであるが、ケアハウスから救急車で運び込まれたこの患者さんは重症胆道感染症(急性閉塞性化膿性胆管炎の可能性がある状態)だったからである。

高齢で認知症が高度の場合、大学病院に転院することも難しいので、大学病院消化器科の胆膵チームに機材持参で総胆管ドレナージに来てもらえるよう交渉しなくてならない。医師も少ない私の病院では、その処置ができないからである。

大学のチームの担当医(大学の外来で診察中だったとのこと)への連絡がなかなかとれず月曜の半日かかった。結局、当日の処置の手配はできなかった。チームで動かなければならないので、それを構成できるかどうかは、時々の条件による。都合がつかないときもでてくるのである。

ようやく「翌火曜に行きます」という約束が取れたが、それまで病状を維持できるかどうかが予測不能だった。

処置中の死亡もありうるので、家族への説明内容は複雑である。

月曜の一晩が乗り越えられず悪い結果に終わる可能性もある。

地域単位で捉えられる治療能力というものがあり、疾患によっては、今回のような落とし穴が生じている。そういうときにも、現状では個々の医師の責任が問われるというのがこの国の現状なのだろうか?

そういうわけで、当直だった月曜の夜は常にまして心労が大きかった。案の定、高熱、悪寒戦慄が生じ、敗血症・多臓器不全に進行して行く危険が大きくなったようだった。

火曜の処置自体は成功したので、少しでも改善するよう祈る気持ちだ。

現在、私たち内科の医師がどういう悪条件で主治医や担当医という責任をこなしているか、他の人たちにはまず分からないことだと思うので、ここに書いておくことにした。

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