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2008年7月14日 (月)

映画「花はどこに行った」「日本でいちばん大切にしたい会社」坂本光司・・・会議のない出張 2

普通の出張は会議で全ての時間が占められ、少しでも時間があまると参加者の交流と称しての居酒屋での飲み会になるので、自由がない。

しかし、この日本医師会館への出張は、医師に息抜きさせるという日本医師会の意図があるのか、第2日目の講義は15時30分に終わった。

突然、猛暑の町に放り出されて、行くあてがあまりない。仕方がないので、10分以上歩いてJR巣鴨駅まで行き(熱中症になりかかりながら)、そこから地下鉄で岩波ホールに出かけた。

その日が最終日だった映画「花はどこへ行った」(坂田雅子監督)を見ようと思ったのである。ホールに人は少ない。英字新聞を読みながら座っている80歳代の老婦人を見ると(ここは東京だな)と思う。宇部ではそういう人には出会わない。ただこの人は、私が降圧剤であるACE阻害剤を服用しているせいで少し咳き込んだら、大慌てで席を替わっていったので少し映画鑑賞気分が壊された。

映画は、大体私と同世代で、学生時代は京大の新左翼だったらしい坂田雅子さんの初監督作品である。「ML」とペンキで書いてあるヘルメットをかぶっている監督の若いときの写真が映画冒頭に出てくる。私はなぜか、最近こうしたことが気にならなくなっている。学生時代のセクトなんてほとんど偶然で決まること。問題はその後の生き方である。

*あるインタビューで坂田監督は学生運動にも、反戦運動にも無関係で、距離があったと語っている。となると、映画冒頭の写真は、まったく別の人物のものが象徴的に使われているのかもしれない。

坂田監督はべトナム従軍歴のある米人カメラマンと結婚したが、夫は50歳代で肝癌で死亡する。夫の友人の示唆などもあってこれを兵士時代に曝露した枯葉剤によると考えた坂田さんは、ベトナムとアメリカに出かけ、枯葉剤の影響がベトナム住民や、元米軍兵士にどのようにあらわれているか記録しようとする。それがこの映画である。

「雨を汚したのは誰」と歌うジョーンバエズの透明な声も、映画の題名になったPPMの歌もベトナム戦争のさまざまな写真も私の年齢のものには格別珍しいものではない。しかし、死んだカメラマンの撮影した現代のベトナムの風景はきわめて美しい。そこから映画は始まる。

べト君ドク君の主治医だった女医さんにインタビューする。多くの奇形児の標本を背景にして、《今の自分の仕事は超音波で奇形児を早期に見つけ中絶に努めることだ、そうして社会の負担を軽くしようと考えている》とその女医さんが話す。ここのところは見るのがつらい気がする。日本の障害者には受けいれられない発言だろうが、最貧国では普通に出てくる発想だろう。

私にもなじみの地名になっている激戦地クアンチにも行く。最も汚染の激しい地域であり、ベトナムでも貧しい地域でもある。奇形を持って生きている人がたくさんいる。5000人の村に160人以上の奇形のある人たち。援助はほとんどない。

短い映画だったが、枯葉剤の影響を継続的に追跡しようとする人が今の日本にいることに励まされる気がして映画館を出た。(実はその直後が最後の上映だったようで、監督が挨拶に来たということだった)

それから、池袋のホテルに帰ると、神奈川での講演を終えて、修道中学時代からの親友のA君がやってくる。経済産業省で長く中小企業の支援の仕事をしている。これから茨城県まで帰るというので1時間だけ話をする。

いつも本をもらうが(室町の中世から物をくれるのが良い友達だというのは、日本の常識である・・・ただ私はお土産を持っていったことがない、医師=くすしだからいいのだろうか、考えも深いし。)、今回は「日本でいちばん大切にしたい会社」坂本光司、あさ出版をもらった。著者は大学の先生で、A君の知り合いだということだった。坂本さんがくれた本を私に与え、自分のものは改めて本屋で買うといっていた。

障害者をたくさん雇用して実績を上げているチョーク製造会社、島根県大田市という僻地にあって技術レベルの高さを注目されている義肢・装具会社、シャッター街になった商店街にあって質の高い果物販売で実績を上げているフルーツ店の話などが載っている。これはかえって読んでみたが、とても面白くて周りの人に勧めた。

《大企業への被害者意識の強い中小企業はだめだ、がんばれば、大企業に頼らず独自の業績を上げる方法が見つかるはずだ》というのがA君のスタンスらしい。それはそれで正しいのだが、独自の道を見つけることのできなかった中小企業はきりすてられるのか、という点が心配である。

(その後の話だが、昨日、東京への日帰り出張(これは純粋に会議だけ)の終わりに、羽田空港で山口県の中小企業家同友会の代表をしているという人にあった。上の本の話をすると、島根県大田市の装具会社のことは知っており、A君に講演を頼んでみようということになった。)

ところで、国立西洋美術館でコロー展をやっているので行きたいが、なかなかチャンスがない。当分は会議だらけの出張が続く予定である。

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コメント

ベトナムについてのブログを書いています。
TBさせていただきました。
有難うございます。

投稿: ベトナム大好き | 2008年7月17日 (木) 23時09分

あさ出版の木内と申します。

このたびは『日本でいちばん大切にしたい会社』をご紹介頂き、どうもありがとうございました。

野田浩夫様のブログを『日本で一番大切にしたい会社』公式ブログにて紹介させて頂きましたので、よろしければご覧下さい。
http://blog.canpan.info/nihon/archive/9

また、日本理化学工業のエピソードと、著者の坂本先生からのご挨拶が入った動画を作りましたので、是非ご覧下さい。
【特集ページURL】
http://www.sinkan.jp/special/care_in_jp/index.html
【YouTube動画URL】
http://jp.youtube.com/watch?v=mvA0n1fctyA
 (↑ブログにもお貼りいただけます)

もしお気に召しましたら、ブログにてご紹介頂ければ嬉しいです。

今後とも、どうぞよろしくお願い致します。

投稿: あさ出版 木内 | 2008年11月12日 (水) 22時45分

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» ★ベトナム 少数民族 SAPA サパ ★ [★厳選★ベトナム生活最前線生情報★]
Xin Chao!!幾つかの山岳民族(少数民族)の人たちに出会ってきました。写真を撮らせてもらいましたが、何族の人たちなのかが残念ながら明確には分かりませんでした。本当に残念です。ベトナムのモン族の系列では、白モン族、黒モン族、赤モン族、花モン族などがあるそうです。写真に掲載した民族は黒い服を着た民族ですが、華やかな刺繍の民族衣装を着ている民族の方もいましたよ。本によると、山岳民族 (少数民族) の中でも花モン族�... [続きを読む]

受信: 2008年7月15日 (火) 08時32分

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