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2008年4月 2日 (水)

ハンナ・アレント「暗い時代の人々」・・・生きている革命を捉まえる 見えない空間から見える空間へ

大げさな話と敬遠されなければいいのだが。

1905年の革命のときも、1917年の革命のときも、その出発点にレーニンはいなかった。いずれも亡命先でロシアの情勢の急激な変化を知り、急ぎ帰国して情勢の発展に努めたのである。

革命は誰かが設計して起こるものではない。

まるでひそかな気流の形になって、見えない龍が体をうねらせて進んでいるように、現代の社会の中に革命は遍在している。

風にさっと体を撫でられるのを感じる、あるいは、夕方の斜光に龍のうろこが一瞬光ったのを見つける、そのとき、ひるむことなく跳びかかり龍を捕まえて、みんなが見ている可視の空中にその胴体の一部でもいいから引きずり出す。それが運動家の役割である。

(なんとなくアニメっぽいイメージ)

昨日は、昼休みに、病院の前庭で後期高齢者医療制度撤回の院内集会を開いたあと、市役所前に座り込みに行った。その後、午後の面倒な外来と、大急ぎの病棟患者の回診、労働組合との定期協議をこなすと、ほとほと疲れ果てたのだが、バスに30分乗って、隣の市に行き保険医協会の理事会に出席した。

実は、集会のなかで地元の医師会が後期高齢者診療料の請求を集団でボイコットしようと呼びかけていることが情報として報告された。本当は医師会から私宛にもFAXが来ていたのを私が気付かずにいたのを、担当事務は気付いたというものだった。

元県会議員の古参の活動家が、それを高く評価して、こういう動きが後期高齢者医療制度を根本から掘り崩すのだと発言した。

しかし、私の知る地元医師会が、自分で考えてこういう方針を出すとも思えず、私自身としては狐につままれたという感じだった。

保険医協会の理事会で真相は分かった。

この方向で地元医師会に働きかけるというのは私もいた前の理事会で決まったことだった。私は病院所属で、直接関係がないので、開業医の理事である大先輩が、医師会長に電話することになったのらしい。

しかし、私にははっきりした記憶がなかった。いつものように他人の話は上の空でいたか、疲労のあまり居眠りしていたかである。

その動きは、私の市以外の他の市の医師会でも成功していた。

ボイコットが瞬く間に全県下に広がる可能性が見えた。

そのとき、ようやく、私に龍の鱗の一枚が光るのが見えた。

これをしっかり捕まえて、見えない空間から見える空間に龍を引きづり出さなければ。

*数日前からハンナ・アレント「暗い時代の人々」河出書房新社、1986初版ー1995改装版を読んでいる。なぜそんなものを読んでいるかは別の機会に書きたいが、その中の「ローザ・ルクセンブルく」の章の一説。

「彼女が革命的労働者評議会(のちのソヴィエト)から学んだ主要な点は、(中略)革命は誰によって「創り出される」ものでもなく、「自然発生的に」勃発するものであること、さらに「行動への圧力」はつねに「下から」くるものであることなどであった」

ローザ・ルクセンブルクも100年位前に、私と同じようなことを(ことの規模はまったく違いながらも)感じていたのだろう。

*ところで、ローザ・ルクセンブルクがベルンシュタインの「議会での多数派獲得による平和革命論」に激しく反対したのは、議会の役割を軽視したというより、資本主義国の外側にある非資本主義国の存在を重視し、そこからの収奪による富の集積とそのための戦争をベルンシュタインが肯定していたからである。この点では、今日のウォラーステインと同じ視点にローザ・ルクセンブルクは立っていたのだろう。

**その後、経済のグローバル化の進展のなかで、資本主義の外側にある非資本主義国というものが存在しなくなり、世界が一色の資本主義に塗りつぶされてしまうと、この対立はなくなるかもしれない。つまり、そのときは共産党と社会党が違う理由がなくなるというわけである。しかし、そういうことが起こりうるのだろうか?やはり、中核、半周辺、周辺という色合いの違いは残り続けて、それらの国の間での収奪に対する態度が問われるのではないだろうか?

ともあれ、必要なことは、見えない世界の風の動きを感じたり、薄暮の空にさっと光るものを見つけることのできる、むだに逸(はや)ることのない静かな姿勢である。

それは、私のイメージでは、小野十三郎がその詩に描く国東半島の儒者 三浦梅園である。病院の窓から国東半島の影を見るたびに、私も三浦の姿を思い浮かべている。

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