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2008年1月 7日 (月)

池澤夏樹「きみのためのバラ」2007

年末に注文していた池澤夏樹の短編集「きみのためのバラ」新潮社、2007がようやく届いた。

ある意味、池澤らしくないとっつきやすさ、分かりやすさ、面白さですぐに読み終えた。昨年評判が高かったのもよく理解できる。

しっかりと池澤らしい作品であるが、加藤周一「幻想薔薇都市」(まぼろしのばらのまちにて)岩波書店、1994と類似性があるように思えた。

地球上のあちこちを歩きまわり何ヶ国語も操るという外面だけでなく、世界への向き合い方の本質的なところでの類似。

短編集全体を通じて、言葉だけでしかつなぐことのできない世界のありようが多面的に描かれる。これは本当のところ決して分かりやすいものではないだろう。労働と言語を人間の「本質」と考える尾関周二の言語論にも通じるものがある気がする。

各作品はどれも面白いが長編「花を運ぶ妹」文芸春秋、2003の主人公が再び登場するバリ島を舞台にした「レギャンの花嫁」に注目した。作品群を横断して同一の登場人物が登場するという方法は多くの作家が使っているが、池澤もこのやり方で次々物語を膨らましていくのだろうか。

そこで、僕が思いついたのは、僕の好きな小説の登場人物や評論家を借用して、彼らが僕のストーリーの中で動き回るという小説である。

たとえば李恢成「見果てぬ夢」講談社、1986の主人公と加藤周一がソウルで会話するというシーンから物語を動かしてみよう・・・。

もっとも、李恢成『死者と生者の市』文芸春秋社、1996の中自体に、加藤周一氏が名前を変えてではあったが一登場人物になっているので、それだけでは面白くもなんともないのだが。

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