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2007年12月21日 (金)

東アジア?東南アジア?

大学の6年後輩で、一緒に山口民医連をt作ってきたN先生が、2年間の努力のあと、タイ国の医師国家試験に合格した。もちろんタイ語の試験を規定どおりに受けての話である。

タイ国の医師免許を持つ日本人医師は彼が最初であるようだ。

(私たちの仲間には、日本人歯科医で初めてカナダの歯科医師国家試験に合格した女性歯科医もいて、小さい集団なのになんて国際的なのだとつくづく思う。島挙げてハワイへの移住に熱中した貧しい周防大島と同じようなメカニズムが働いているのだろうか)

N先生のこれからの仕事への期待をやや無責任に考えて

「バンコクにいる10万人の日本人を対象にした医療をその立場を使って独占的に展開すれば大商社が何億円もの投資を惜しまないだろうが、そういう方向ではなく、民医連に似た泥臭い仕事を」

と考え、「東アジア民医連を」という展望をこのブログでも書いた。

しかし、N先生は「タイは東アジアではない」と反応してきた。

確かに、加藤周一先生が「東(北)アジア共同体を」といわれる時、主に日本、中国、韓国の3カ国に念頭に置かれているようで、東南アジアまでは含まれていない。

では、東アジアと東南アジアを合わせた地域はどう呼ぶのだろうか?

大阪大学の子安宣邦氏の「『アジア』はどう語られてきたか」(藤原書店、2003)を読む中で学んだことだが、日本はこれを「大東亜」と呼んできた歴史がある。

第二次大戦の戦線拡大に伴って、「東亜」を超える「大東亜」という概念が発明されたわけである。ここで「大」は「大日本帝国」「大韓民国」でいう自尊の「大」でなく、範囲の拡大の比較的客観的な「大」だったのである。(正確には、大東亜にはインドも含まれている。)

では、私たちも「大東亜」と呼ぶか、というのは悪い冗談でしかない

ここで、気付くのだが、「東アジアと東南アジアを合わせた地域をなんと呼ぶか」という疑問自体が、実は「大東亜」的な日本中心の気分の延長線上にあるのではないかということである。

東南アジアから見れば、ASEAN+α ぐらいに表現されるものなのかもしれない。

というわけで、こうした問題は自分に植えつけられている偏見、先入観、オリエンタリズムと格闘しないでは容易に発言できないものだという気がする。

そういうことに、十分留意しながら、それでも、いろんな国民国家内に生まれて根付く民医連的な医療運動と、その国際的な連帯という展望は考えてみたいテーマである。

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