最近の政治の不安定さ
安倍首相の突然の辞任、小沢代表の急な辞意と2日後の撤回。
ここのところ、自民党、民主党の動きが奇怪である。
具体的な話でなく、基本的な線で私なりの謎解きをしておきたい。
日本の保守政治の方向は日本の軍国主義化とナショナリズム強化だと簡単にまとめられるが、動機を見てみると三つの要素がある。
第一はアメリカの要求に基づき米軍と共同行動する軍隊を持たなければならないということである。
第二はグローバル化した日本大企業からの要請で、膨れ上がった彼らの海外資産を守る軍隊を持たなければならないということである。
第三は、増え続けるワーキングプア層への不満への対処としてナショナリズム高揚が必要ということである。
しかし第一と第二の間には緊張関係、場合によっては矛盾が生ずる。
アメリカの要求と国内大企業の要求が必ずしも一致しないということである。その際、アメリカのように単独で行動する力がない国家は、国連の枠組みに頼ることになる。*
あるときは、自民党がアメリカの代弁者、民主党が国内大資本=国連主義の代弁者として対立する。その逆も同時にあり。
これが、今回の自民党と民主党の奇妙な動きの背景にあるのだろう。
といっても、結局はアメリカが自分の要求を押し通すというところに落ちつく。
したがって、ワーキングプア層はどちらを応援してもいけないはずだ。
自分の利益とは関係なく、ナショナリズムに踊らされて軍隊に入れられ、やがては戦死することが期待されているだけなのだから。不満が爆発しないように手当てはされるが、いつまでも、自分たちの命名のように、不安定なプレカリアートとして存在し続けなくてはならないように仕組まれているのだから。
*この推論は、現在私がエレン・メイクシンズ・ウッド「資本の帝国」(紀伊国屋書店)を読んでいることの影響を受けている。この65歳の優れた女性政治学者の著書についてはいずれまとめて触れる予定である。それにしてもスピヴァクといい、ウッドといい女性の政治学者の活躍は目覚しい。アメリカの大統領が女性になれば、21世紀は女性による政治の時代と特徴付けられるようになるかもしれない。それは喜ばしいことではある。
** スピヴァクの一橋大学での講演が「論座」11月号に掲載されている。岩波新書「ポストコロニアリズム」を書いた本橋氏が訳しているが、一読しただけでは理解できなかった。講演会に出た人はどうだったのだろうか。
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