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2006年12月27日 (水)

通院の交通手段を集めてみた

ポリクリでやってくる医学生に「患者中心の医療 PCM」の中心概念である「(医師が捉える疾病 disease とは違う)患者にとっての病い体験 illness」を把握することの重要さを何度も話しているのに、実際の自分の外来はそうはなっていないのではないかと突然気付いた。

たとえば、外来患者さんにとって、病院に来るということが日常生活の中でどのような意味を持つのか、通院は日常生活にどう影響を与えているのか、そういうことに関心をはらっていただろうか。

そこで今日は心を改めて、患者さんの自宅の地理と、そこからどんな交通方法で病院に来ているのか、に質問を限定して、予約外来の患者さん全員に訊いてみることにした。

そうすると、交通手段と関係のない話があふれるように湧いてきて、これまで知らなかった患者さんの生活像が急に豊かなものになった。
それは、これまでの私の外来がどんなに貧しいものだったかの証左でもある。

さて、どういう話を聞いたのか、カルテの中だけに残しておくのももったいない話であるし、私の記憶のためにもここに書いておきたい。すぐに書いておかなければ忘れてしまうことが多いからでもある。

① 時々喘息を起こす女性。歩いて通院しているが、最近息切れが強い、何とかならないかね?
さらに聞いてみると、20年以上、宇部興産工場の構内で、はつり作業の「手元」として働いてきた。粉塵は浴びるほど吸った、とのこと。(→レントゲンを見ると確かにじん肺のようだった。)

②自家用車で通院。ガス局職員。通院のための時間は保障されている。ただ最近、営業活動が多くなった。先日の都市ガス→天然ガスへの切り替えは国の政策。天然ガスは北九州からパイプラインで持ってくる。プロパン業者と競合して契約を取る営業が市職員でも増えた。ところで、産出国の姿勢が急に資源保護に傾き、天然ガス供給は不安定ではなかろうか。

③元製薬会社社員夫婦。健康のため歩いて通院。東南アジアから始めて、だんだんと西に足を伸ばしている。最近はエジプトとトルコに行った。エジプトには観光警察があり、観光客を守るのに一所懸命で治安はさほど悪くなかったが、都市の整備はカイロでも驚くほど遅れている。それはともかく、旅行に行くために健康を大事にしていると言ってよいほど旅行が好き。

④設計事務所の代表取締役。88歳だがまだ現役。というのは後継者だったはずの日大建築学科を出た息子が15年前に事故で死んだから。それは今でも残念でならないが、今は、T老人病院に入院している寝たきりの妻を看取るまでは元気でいようという気持ちで、気力を振り絞ってタクシーで通院している。

⑤79歳だが、運転には絶対に自信があるので、自家用車で通院している。1950年に免許を取ったので、もうすぐ免許も還暦。この間、無事故だった。こんなに安全に対し責任感が強い理由は、戦前、朝鮮鉄道の機関士として鍛えられたから。木浦(モッポ)から大田(テジョン)までを運転していた。もう一回行って見たいという気持ちは強い。

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