キューバの思い出
キューバはフィデルたちの国で
僕たちが作った国ではない
だから、僕がキューバを思い出すというのも滑稽だ
しかし
一日の労働から解放されて
自転車を押して帰る深夜には
この坂道がキューバの港町の坂になる
―粗末だが人でいっぱいの家に挟まれた道
―ほの暗い街灯
 ̄その光に照らされる路地と
次々横切ってはどこかに消えていく子どもたち
―カリブ海からくる風と
長い岸壁を超え、海岸通りを通行禁止にしてしまう波
―伝染病研究所の庭を濡らしていく通り雨
誰もいない坂道に立って
僕は1月の亜熱帯の夜の香りを探し出す
去ったものは帰らないが
何かは取り返せると思いながら
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